Texture
ラグジュアリーなソファーのように底突き感がなく、しっとり濃厚。
クリスタルな真綿で締め付けられたくなるような音色のハンブルクスタインウェイ。
クランチな音の粒子が和音にすると溶け合う、軽いが力強くてドライ。
変に繊細な音色を装わないのがクールでどこか解放感があるニューヨークスタインウェイ。
HBとNYどちらも重心が低く、ズシッとボディが地響きのように鳴り、しかも音抜けがいい。
以上は個人的な印象です。
ホロヴィッツは鼻にかかったピアノを好んだそうですが、NYは何となくそんな感じがするような気がします。
カーリーハードメイプルがNYの主用材とのことですが、それを材でチューニングハンマーを作って頂きました。
私には結構な贅沢品ですが最も身近な工具、こだわりたいものです。
チューニングハンマーで音が違うといってもかなり微妙です。
人間、手に持つ物の感触で気分が変わるせいもあると、私は思います。
日々の調律がより快適になったこと、音に映るのを願っております。
Don Giovanni
また来年も楽しめそうです。
私が読みはじめたのは最近で、『騎士団長~』から少しばかりですがハマりました。
ドン・ジョヴァンニの話が出てくるのかな?と興味を持ったのがきっかけです。
ドン・ジョヴァンニのあるシーンが飛鳥時代の絵に描かれていて、絵のある部屋にはミミズクがいるという、かなり意味深な物語。
小説内の、セレブな屋敷にスタインウェイがありました。
持ち主の免色さんという人は、どこかB・ミケランジェリのような風がしました。
あとは特に、イデアとメタファーの描写が何とも絶妙です。
勝手に連想したのはイデアとメタファー、天と地、プラトンとアリストテレス。
ピタゴラスは和音の秘密を解明。
楽器の音を何オクターブが高くすると人間には聴こえなくても数学的には認識出来る、天空の音楽。
プラトンのイデア論は数学に根拠を求める。
平均律は数学的には表せても、実際に完璧に割り振るのはほぼ不可能。
音律のイデアは現物のピアノでありえなくても、ピアノの音は美しく聴こえる。
イデアに近づけば近づくほど美しい、しかし五感でイデアそのものを人は感知出来ない。
観念的には存在する。
それでもイデアに近づこうとする、幸か不幸か人は。
イデアに近い、B・ミケランジェリの演奏。
イデアは色を免れる。
UPRIGHT
観光名所でないところでも歴史的な町並みがさりげなく豪華で、ちょうどよく都会、これが都。
昨年今年に観光した京都は何故か人生の節目に行きたくなる。祇園あたりの中心街が特にいい感じでょうか。
今年はわびさび銀閣寺から広大な南禅寺、予想以上に雅だった平安神宮、仏像がスゴい東寺、そして平等院鳳凰堂などに行きました。
鳳凰堂は修復中で本尊・阿弥陀如来坐像は拝せませんでしたが、左右対称、水面に映る姿が美しい、やはり現地でも。
ところで、アップライトは英語で「直立したもの」。
そのアップライトピアノ、置き場によってはガタついてしまいます。
そんなときに役立つ10円玉。
平等院鳳凰堂の御力で直立、更には阿弥陀如来の量りしれない光と寿命をピアノに与えて下さるのかもしれません。