インハーモニスティー
ピアノ技術者ならインハーモニスティーのことは周知のようにみえますが、計算式は難しく、更に値はセント値になります。
セント値は多少性能いいデジタルチューナーで出てきますが、ヘルツに換算するやり方は理解されていなように思います。
以前にも書いたのですが、割り算であるはずがないのです。
オクターブ1200セントで平均律半音間100セントであるなら、
(880-440)÷1200=0.366
平均律a=440で、h=466.16。
(466.16-440)÷100=0.2616
すでに矛盾しています。
やはり、2の1200乗根と考えるのが正しいかと私は思います。
2の12乗根の更に100乗根と値が一致します。
インハーモニスティーの計算は、弦の材質からくる値3.3×10の15乗×弦直径の2乗÷弦長の4乗÷周波数ヘルツの2乗。
出てきた値はセント値。
よくあるのが440ヘルツ、弦長412㎜、弦直径0.975㎜。
3.3×10の15乗×0.975÷412の4乗÷440の2乗=0.5767987871セント。
この値は第1倍音のインハーモニスティーです。
それでは、第2倍音のインハーモニスティーはというと、8の平方根を掛けるという。
オクターブは周波数×2。
インハーモニスティーは2の2乗なので2×4で8とのこと。
0.5767987871×8の平方根=1.631433335
インハモを考慮した第1倍音のピッチは、
440×2の1200乗根の0.5767987871乗=440.1448916
a=440.1448916ヘルツとします。
インハモを考慮した第2倍音のピッチは、
880×2の1200乗根の1.631433335乗=880.8296614
a1=880.8296614ヘルツ。
880.8296614-440.1448916×2=0.5398781609
aの1音だけで、第1倍音と第2倍音の差が0.539ヘルツもありました。
和音どころか、1音だけで既にインハーモニ―ということです。
周波数
近頃、ソルフェジオ周波数というのを見かけます。
1939年ロンドン国際会議による標準ピッチはすっかり悪者扱いで、良い周波数(ヘルツ)があるとのこと。
174安定、285促進、396解放、417変化、528DNA修復、639調和、741自由、852直観。
音階になりそうなのは、174へ、396ト、417嬰ト、528ハ、741嬰へ。
平均律a1ピッチにするなら、
174→438.44 396→444.49 417→441.79 528→443.99 741→440.59
全体に440以上のピッチです。
444に調律すると心地よいとの話もあるようですが、ピアノの場合は弦切れが心配です。
実際現場では、アコースティック楽器合わせだと弦切れしないよう、440指定もそれなりに多くあります。
また、少数点以下のピッチを計算上出しても、実際には温湿度変化や日光や照明が当たったりすれば、コンマ以下はすぐに変化しますし、インハーモニスティの計算は複雑化するので除外しています。
医療上?には音叉を使ったりするようですが、どこまで正確な周波数でなければならないかもわかりません。
ちなみに音叉を調律に使う人もいますが、温度変化の影響を受けやすいので、基音はデジタルチューナーなどでとるほうが正確であるとの見解が増えつつあるかと思います。
デジタル思考的なもので、ピッチ変化しやすいアコースティックな楽器にあてはめていくのは、あまり向かないように私は思いました。
肘
長らくしてきたやり方は習慣でなかなか変えるのは大変ですが、五十肩にでもなると切羽詰まってくるのでどうにかするしかありません。
調律するのに肘をつくかどうかは大きく二分するところで、単に良し悪しを言えるものではありませんが、長年してみると肩に負担があるのはelbow onではないかと。
身体の使い方で調律道具も違ってくるので、onなら柄の長いハンマー、offなら短いのが適していると私は思いました。
柄が長いと回転距離が長いぶん、精度を出しやすい感じがして、デジタルで観念的な調律をするかのよう。
短くすると回すのは重くなり大変なので、肘つきは難しくoffになりますが、体全体を使って回すようになり、大変でも肩の負担は減るかもしれません。
自分がつくりたい音の正解を探るかのようで、より感覚的になるかのようです。
また、offならUPよりGPの方がやり易いようにも感じます。
エレベーターやエスカレーターを多用するより階段の方が健康に良い、かの様になるかどうか。
どことなく、力強く芯のある音になるような気がします。