クリスティアン・ツィマーマン
そろそろ学校調律シーズンも終わり、通常ペースの仕事に戻ってきました。
たまに調律師の自宅ピアノはさぞかし良い状態でしょう、と言われることがあります。
ところが私のピアノはその逆で、昔から実験ばかりしているので、なかなか訳のわからないピアノに成り果ててしまってます。
大分前になりましたが、スタインウェイ会でピアニストのクリスティアン・ツィマーマンさんがスタインウェイ会調律師のために講演をして下さいました。
ご自身で調律や修理もされ、いろいろな実験をされてきた体験談でした。
超人的な耳の良さで、私ごときとは世界が違う話でしたが、印象に残った話では、様々なハンマー硬化剤を試されたことです。
私も爪の垢を煎じるように、自分のピアノで試しております!
整音という言葉は、調律師以外の方にも随分と知られてきたようですが、実態がどこまで理解されているかは???です。
特殊な場合を除けば、基本的な大きな方向としては、ハンマーを柔らかくして音をマイルドにするものです。
逆の方向はハンマー硬化剤を使用することで、ハンマーを硬くして、輝きある音にしていきます。
何故だか、こちらはあまり知られておりません。
整音もハンマー硬化剤も案外、盲点なのが後から効いてくることです。
お客様の現場でちょうど良くすると、次の日やその後に更に効き過ぎてしまったりします。
どうも後から効果が進行するようです。
調律師にとって、なかなか厄介な技術です。
自分のピアノを実験台にして練習する意味は大いにあると思っております。
整音
3月はもっぱら学校の調律です。ヤマハのG3の調律をすることが多いです。
音楽室や体育館のグランドピアノは、よく使われていたり古かったりで、なかなかキンキンした音色になっていたりします。
こんな時は、いざ整音と思うところですが、それは危険な落とし穴だったりします。
調律は、ほぼ静かな環境で一人で作業しますが、その状況と、生徒が大人数で集まって授業や式典をする時とは全く違います。
静かな時にちょうど良い音色に整音してしまうと、本番のときに鳴らないピアノ=生徒の声に圧倒され負けてしまうピアノになってしまいます。
実際に使う状況をしっかりと把握した上で整音したいものです。
ピアノの弦が切れた!!
音楽室のピアノで弦が切れることがあります。
小学校などで生徒の元気な声に負けないように音を出そうとすると切れやすいようです。
最近、ヤマハの新品から10年の間に4箇所も切れてしまったグランドピアノがあります。ちなみにご連絡頂ければ、急いで張りにおうかがい致します
この間は低音の巻線を張りに参りました。
新しい弦はすぐに伸びて音が狂ってしまうため、しばらくはフェルトで音を止めざるを得ません。
音が落ち着くまでに時間もかかりますので、やはり切れないに越したことはないと思いますが、状態によって避けられない場合もあります。
学校などの場合、埃など入らないように厚いカバーをかけることが大半のようですが、そのために音がこもってしまいます。
それで、生徒の声に負けない音を出そうとすると切れてしまったりします。
カバーを取って蓋も開けてしまえばクリアーな音が出ますが、
埃や汚れ、または生徒が触るなどして違った故障がでることもあります。
なかなか解決しにくい所かもしれません。