バーチャル未来
松茸の季節。
買えないならエリンギで代用、輪切りにすれば帆立に似ているような。
ブレードランナーは世代的に公開から遅れてですが、レーザーディスク時代に何度も観ました。
私はその後にオペラ鑑賞が増えたのですが、今ほど手軽でなかったぶん貴重でした。
もう7年前でしょうか、ブレードランナー2049。
バーチャルホログラムのジョイが印象的で、スイッチ一つで現れる。
単に少子化に反すると考える以上に、妄想を満たすその先の在り方が心に残りました。
レプリカントとホログラムの愛には意思疎通もあり、意外なほどに感情豊かに生きる。
ホログラム彼女は壊れて消えてしまうのですが、とても悲しくて、どうにもならない虚しさが漂うのが不思議でした。
その後、プライベートだったはずのジョイは一般的な巨大映像になったりするのですが、もうすでに悲しいというよりは苦笑に近かった。
出会いがリアルかどうかではなく、バーチャルな未来は予期せぬ思いと新たな妄想に遭遇し、それほど違和感もなく現れるかもしれません。
悩み
ウェルテル効果とは、マスメディア報道に影響されて自殺が増える事象を指し、ゲーテ(1749~1832年)の実体験をもとに執筆されている書簡体小説『若きウェルテルの悩み』(1774年)に由来する。
ちなみにゲーテの同時代人ナポレオンはウェルテルの愛読者で、エジプト遠征の際に7回読んだらしい。
マスネがオペラ化していて、タイスやマノンと並んで代表作の一つ、
「手紙の歌」や「オシアンの歌」などは単独でも歌われる有名なアリア。
10何年ぶりのレッスンで持っていった曲の一つがオシアン、Pourquoi me reveier。
フランス語はほぼ歌ったことがなくわからなかったので、名歌手が歌っているのを耳コピで歌ってみて、あとはレッスンで直して貰いました。
私にとって問題はやはり、bまたはAis音。
この曲はcからAis、増6度上げるのがキツく、出せたり失敗したり。
ちなみに妙なる調和のTosca,sei tu!ならdからbで短6度、調子がよくないと失敗します。
10何年か前に発表会で歌った蝶々夫人Addio,fiorito asilならAsからbの全音上げなので出しやすい。
音幅が広いと出しにくいのですが、ここで悩むこと自体がテノールでないのです、残念ながら。
テノールは名アリアなど多いので歌いたくなるのですが、自分に合った音域で歌うのが本来。
ゲーテは『若きウェルテルの悩み』を執筆することで、人妻シャルロッテへの失恋自殺危機から脱出できたらしい。
その後、1786年のイタリア旅行で魅了されまくったのを境に、作風はガラリと変わったという。
シャルロッテならぬテノールに失恋してもピストル自殺せずに、更に素敵なことがあると信じる力が大切と思います。
テルミドール
オマール海老などの身を半割にしてクリーム系のソースをかけて焼いたテルミドール。
1794年、ロべスピエールはテルミドールのクーデターでギロチンに処され、その2日前の7月25日に実在の人物アンドレ・シェニエもギロチン処刑される。
立憲君主制を信じるシェニエは詩人、画家ダヴィッドとも交際があり、ルイ16世を擁護する論陣。
ロべスピエールは、彼を風刺する詩をシェニエが書いたことで処刑した。
普通選挙を擁護し民主主義を標榜したが、テルールと呼ばれた恐怖政治の独裁者というイメージ。
私には少しテッシトゥーラが低めのカルロ・ジェラールのアリア、Nemico della patriaも再度歌ってみているのですが、やはり練習を続けていると中音域の発声が安定しなくなることがあります。
高音域の発声のまま、中音域に下りていきたいものです。
架空の人物のアリアだけに、真実味ある歌いかたが出来るといいと思いました。
ちなみに、アンドレア・シェニエとトスカは共通点の多いオペラのようですが、ウィキペディアによるとスカルピア男爵も実在しないらしく、カヴァラドッシより多く歌うわりには独立したアリアがありません。
テ・デウムはピアノ伴奏だけでは拍子抜けだろうし、残念ながら愛好家にスカルピアは縁がないのかもしれません。
参考図書:新潮オペラCDブック プッチーニ[トスカ]