Music Wire
後期フロイトによると、反復強迫は快感原則や現実原則よりも根源的。
人は嫌な経験や人間関係を何度も夢や行動で繰り返す。
そうして痛みを理解しようとする、とのこと。
話はピアノになりますが、弦が切れたときに張ることを張弦といいますが、その際に昔はチューニングピンを3回転以上廻して張弦していましたが、それだとピン板に負担がかかりピンが弛んでしまう。
ここ数年前からはコイルメイキングレンチというのを使うようになり、弦にコイル癖をつけることで、チューニングピンの回転を減らす。結果、ピン板の負担が軽くなります。
最近では、器用なピアニストさんも使用されているとのこと。
弦も反復強迫のように戻ろうとするし、張弦後はすぐに伸びて調律が落ち着くのに何年かかかります。
伸び代のあるうちがフレッシュで音も伸びます。
新品のピアノなどは弦が新しいので、いい音ですが調律はすぐに狂ってしまいます。
ご理解頂きたいところで御座います。
Texture
ラグジュアリーなソファーのように底突き感がなく、しっとり濃厚。
クリスタルな真綿で締め付けられたくなるような音色のハンブルクスタインウェイ。
クランチな音の粒子が和音にすると溶け合う、軽いが力強くてドライ。
変に繊細な音色を装わないのがクールでどこか解放感があるニューヨークスタインウェイ。
HBとNYどちらも重心が低く、ズシッとボディが地響きのように鳴り、しかも音抜けがいい。
以上は個人的な印象です。
ホロヴィッツは鼻にかかったピアノを好んだそうですが、NYは何となくそんな感じがするような気がします。
カーリーハードメイプルがNYの主用材とのことですが、それを材でチューニングハンマーを作って頂きました。
私には結構な贅沢品ですが最も身近な工具、こだわりたいものです。
チューニングハンマーで音が違うといってもかなり微妙です。
人間、手に持つ物の感触で気分が変わるせいもあると、私は思います。
日々の調律がより快適になったこと、音に映るのを願っております。
Don Giovanni
また来年も楽しめそうです。
私が読みはじめたのは最近で、『騎士団長~』から少しばかりですがハマりました。
ドン・ジョヴァンニの話が出てくるのかな?と興味を持ったのがきっかけです。
ドン・ジョヴァンニのあるシーンが飛鳥時代の絵に描かれていて、絵のある部屋にはミミズクがいるという、かなり意味深な物語。
小説内の、セレブな屋敷にスタインウェイがありました。
持ち主の免色さんという人は、どこかB・ミケランジェリのような風がしました。
あとは特に、イデアとメタファーの描写が何とも絶妙です。
勝手に連想したのはイデアとメタファー、天と地、プラトンとアリストテレス。
ピタゴラスは和音の秘密を解明。
楽器の音を何オクターブが高くすると人間には聴こえなくても数学的には認識出来る、天空の音楽。
プラトンのイデア論は数学に根拠を求める。
平均律は数学的には表せても、実際に完璧に割り振るのはほぼ不可能。
音律のイデアは現物のピアノでありえなくても、ピアノの音は美しく聴こえる。
イデアに近づけば近づくほど美しい、しかし五感でイデアそのものを人は感知出来ない。
観念的には存在する。
それでもイデアに近づこうとする、幸か不幸か人は。
イデアに近い、B・ミケランジェリの演奏。
イデアは色を免れる。