1/4
モーツアルト晩年~ベートーヴェン時代には、キルンベルガー音律が使われていたと言われているようです。
ⅠとⅡとⅢがあり、私資料にあるのはⅢ。
ヴェルクマイスターⅢと同じで、8個の純正5度と1/4の5度が4個ですが場所が違います。
具体的には
c-g 1/4,g-d 1/4,d-a 1/4,a-e 1/4,e-h 純正,h-fis 純正,fis-cis 純正,cis-gis 純正,gis-es 純正,es-b 純正,b-f 純正,f-c 純正,
です。
5度圏の♯系属調側に1/4が集中しています。
ヴェルクマイスターⅢとの違いは、a-eとh-fisです。
というわけで、机上の論なら調律教科書にあるような話ですが、やってみるのが大切です。
c-g-d-a-eは1/4狭い5度が4個。
足し算で1になるので、c-eは純正長3度。
純正が多い分、ヴェルクマイスターⅢより少し調律しやすいです。
平均律5度は1/12で、ヴェルクマイスターとキルンベルガーの5度は1/4なので、平均律5度のウナリ3倍です。
合唱などのハーモニーは、そのつど純正と言いますが、平均率ではオクターブしか純正が聴けません。
キルンベルガーⅢだと、3度4度5度の純正を聴けます。
しかし弾いてみた感じは色彩豊かですが、私には違和感がありました。
1/4を集中させて長3度を純正にした反動かもしれません。
1/4系ではヴェルクマイスターⅢが何とか許容範囲なのかも?と私は思いましたが、感じ方は人それぞれで曲にもよります。
5度1/4の場所が違うだけで、だいぶ違う印象でした。
何事もやってみなければ、わかりません。
通常は平均律をおすすめ致します。
ヴェルクマイスター
アンドレアス・ヴェルクマイスター(1645-1706)はドイツのオルガ二ストで理論家。
スカルラッティなどもヴェルクマイスター音律だったのではないかと言われているようです。
平均律は狭い5度を1/12ずつ割振っていますが、ヴェルクマイスターは純正5度が8個と1/4狭い5度が4個。
長3度は所々バラつきますが、ミーントーンほど極端な3度ではありません。
平均律と比べれば、濁った5度が4つありますが聴くに堪えないほどではないと思います。
具体的にヴェルクマイスターⅢ(1691)の5度は
c-g 1/4,g-d 1/4,d-a 1/4,a-e 純正,e-h 純正,h-fis 1/4,fis-cis 純正,cis-gis 純正,gis-es 純正,es-b 純正,b-f 純正,f-c 純正,
となります。
自分のピアノでミーントーン調律をやってみたら、あまりに酷くて弾くに堪えないので、ヴェルクマイスターⅢにしました。
いつまでたっても弾けなくて人前では弾けませんが、ショパンop10-12、op25-1、シューマンのアラベスク、リスト愛の夢など試しに弾いてはみました。
平均律に慣れきった調律師の耳で聴くと違和感ありますが、実際に弾いてみると陰影がつけやすく立体感があるようで、かなりいい感じです。
平均律は3度が揃ってるのがつまらなく、バラつきのある方が良いというピアニストもいらっしゃるようです。
ミーントーン
長3度が3つでオクターブですが、3つとも純正にするのは現代ピアノには不可能。
ミーントーン音律では2つの長3度が純正で残り1つに皺寄せ(ウルフ)があります。
私の手持ち資料によるミーントーン長3度は
c-e純正,cis-fウルフ,d-fis純正,es-g純正,e-gis純正,f-a純正,fis-bウルフ,g-h純正,gis-cウルフ,a-cisi純正,b-d純正,g-esウルフ。
純正長3度が8個、ウルフ長3度が4個。
12個の長3度で、純正とウルフは2:1の割合です。
完全4度と完全度5度では、明らかに使用出来ないのがes-gisと転回音程のgis-es。
何故かc-fとf-cは純正。
4つの長3度とes-gisのウルフがあまりにキツいので、ペダル不使用の分散和音ならともかく、重和音になると2音だけでもウルフ間の2音なら、調性云々以前に、バッハ時代以降の曲ばかりの現代の演奏に堪えません。
ミーントーンはヨハン・セバスチャン・バッハ(1685-1750)以前、1523年にイタリアの作曲家で理論家のピエトロ・アーロン(1490-1545)によるもの。
バッハの平均律クラヴィ―ア曲集はウェルテンペラメント音律?と聞きますが、ヴェルクマイスターではないかと言われています。
私の手持ち資料だと、ヴェルクマイスターはⅢとⅤがありますが、どちらも1691年とのことです。