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CFⅡ

 

晩年のグレン・グールドは夏目漱石の『草枕』を愛読し、「二十世紀小説の最高傑作」と絶賛されていたとのこと。
『草枕』は、住みにくい人の世を芸術の力で打破できぬかと思案する青年画家の話ですが、古風な東洋趣味の小説というよりも、奇妙な小説。

『草枕』が書かれた明治39年は日本のピアノが誕生した頃で、山葉寅楠がアメリカにいった7年後くらい。
ピアノつくりはひたすら欧米の文物を学ぶことだったと思いますが、漱石は西欧的思考の根源的な矛盾を発見した最初の日本人。
『草枕』は普通の文学とは違って、何かを表現するというではなく、たんに多彩な言葉で織られた文章。「智に働けば角がたつ。情に棹せば流される。」の意味を探すべきではないのこと。

グールドは、コンピューターに優るエレクトリック・マシ-ンとご自慢のヤマハCFⅡで『ゴルトベルク変奏曲』再録音やブラームス『バラードとラプソディー』などを録音。
優れたエレクトリック・マシーンCFⅡでの録音は、どことなく人情があるかのように聴こえる演奏ですが、逆にそれ以前のスタインウェイでの録音はどちらかというと、ひたすら多彩な音で織られた「非人情」の演奏ように個人的には聴こえます。

「物は見様でどうにもなる、音はどうとも聞かれる、余裕のある第三者の地位に立てば面白い」です。
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